「相鉄ジョイナスでの三人の会話」溝田昌宏

 正午を少し過ぎた時に、三人の背広を着た社員が大きなビルから出てきました。
 三人は、昨日の日本シリーズの試合状況を「あの時にあのボールを投げれば良かった。」とか、「あの時にピッチャー交代をすれば良かった。」と自分の持論を交えて雑談しながら横浜駅に向かって歩いて行きました。
 そして三人は、「相鉄ジョイナス」に入って地下1階まで降りて行きました。
 「今日は、この店にしよう。」と背の高い男が言いました。
 「食通の時田さんが勧めるのだから、ここにしましょう。」と緑色のネクタイをした男が応えると、そのまま三人は店の中に入って行きました。
 イスに座ると、店員が水の入ったコップを置いて「注文が決まりましたら,お呼びください。」と言って戻って行きました。
 「時田さん。ここのおすすめは何ですか・」と緑のネクタイの男が質問しました。
 「フードセットがいいよ。セットメニューを見て好きなものを選ぶといよ。」と時田が応えました。
 三人はそれぞれメニューを見ていましたが、
 「私は、スモークチキンオープンクロックムッシュにするよ。」と時田が言うと、緑色のネクタイをした男が「俺も、それにするよ。寺内君はどうする。」と言いました。
 注文を聞かれた少し若手の男である寺内は「ぼくはパスタが好きなので、栗かぼちゃと厚切りベーコンのトマトソースパスタにするよ。」と他の二人とは違うメニューを注文することにしました。
 注文が決まったので、時田が店員に三人分の注文をしました。
 注文が終わった後、緑色のネクタイをした男が「時田さん今度の土日は、ご旅行の予定がありますか?」と質問をしました。
 「杉田君、今度の土曜日は子どもをデイズニーランドに連れて行こうと思っているんだよ。」と質問した緑色のネクタイをした男に応えました。
 「それは、いいですね。人気のあるテーマパークなので、お子様がきっと喜びますよ。」
と杉田が言いました。
 そして、顔の向きを変えて「寺内君はどうするのだね。確か君のところには、幼稚園生の子供がいたよな。」と今度は寺内に質問しました。
 質問された寺内は「ぼくは、家族を『よこはま動物園ズーラシア』に連れて行こうと思っています。」と応えました。
 すると杉田が「『ズーラシア』は、珍しい『オカビ』もいるが、広いので、遠くから動物を見ることになるよ。小さな子供には、まじかで動物の見える『上野動物園』がいいと思うのだが。」と言いました。
 すると、若い寺内は「動物は絵本で見ているので、近くで見せるよりも、絵本で見た動物が実際にどのような行動をするのか自然の姿で見せたいので、そこに連れて行きたいのです。」といいました。
 「寺内君、他に子どもを連れて行くのがいいと思っている場所があったら教えてくれる?」と時田が言った時です。
 「お待たせいたしました。」と言って店員が注文した料理を持ってきました。
 時田と杉田の前には、スモークチキンとチェダーチーズをサンドして焼き上げた皿が置かれました。
 そして、寺内の前にはトマトクリームで合わせたパスタの上に栗かぼちゃとベーコンがのせられている皿が置かれました。
 料理がテーブルの上に置かれた後で時田が「料理が冷めないように、続きは食べてからにしょう。それでは食べましょう。」と言ってくれたので、三人とも早速食事を食べ始めました。
 食事中はほとんど会話がなくただ黙々と食べ続けているので時々食器やスプーンの擦れる音がするだけでした。
 三人の手が動かなくなった時に「先ほどのチーフの質問ですが・・・。」と寺内が切り出しました。
 「ああ、どこかいい場所あるかな?」と時田が言うので、寺内は話を始めました。
 「春の季節は、『引地川公園ふれあいの森』が良いと思います。広い公園に桜だけでなくチューリップや芝桜が咲いているので混雑する桜の名所に行くよりもいいですよ。もし車で行くのでしたら、瀬谷駅近くの桜のトンネルがお勧めです。2,8キロメートルの道路沿いに600本の桜が植えられているので、桜の季節は見応えがありますよ。」と言っていいる最中に、店員が食器を片付けて紅茶を三人の前に置いて行きました。
 紅茶を一口飲んでから時田が、「今の時期に子どもを連れて行くのによい場所があるかね。」と尋ねてきました。
 すると寺内が「そうですね。今の時期でしたら、『こども自然公園』がお勧めです。
『めだかの学校』の歌碑がある中池と大池があり、ピクニック広場やバーベキュー広場で食事するのも気分がいいですよ。食後は芝生広場や草地広場を親子で走り回るのも楽しいと思いますが、いかがでしょうか。」と寺内が話をしました。
 その話を聞いていた杉田が「俺、そこなら行ったことがあるよ。結婚する前にうちの奥さんを連れてデートにホタルを見に行ったよ。他にも、冬は梅林に春は桜山にも言ったな。」と言いました。
 その話を聞いていた時田は「何だ。こども自然公園は、杉田のデートスポットだったのか。」と冷やかすように言いました。
 「よく考えてみたら、寺内君の進めてくれた場所は、海老名から通勤に使っている相鉄本線や相鉄いずみ野線の沿線ばかりではないか。」と杉田が気が付いて言いました。
 「そうですよ。地元愛がありますから。それに休日は、遠い人混みの多い場所に行って疲れるよりも、自然に触れてのんびり過ごす方が疲れが取れて本来のレクリエーションになると思うのです。
でも今の日本人は、遠い観光名所に行って疲れて帰って来るので月曜日病という言葉まで生まれてのではないでしょうか。」と寺内は自分の休日の過ごし方に対する自論を話しました。
 それを聞いていた時田は「地元愛の強い人間なら自社愛も強いだろうな。」と笑顔を浮かべながら言いました。
 次の月曜日の朝のことです。
 寺内が、横浜駅を出て歩いていると、少し前を歩いている時田に気づいて速足で歩み寄り「チーフおはようございます。『ディズニーランド』はいかがでしたか?」と尋ねました。
 すると「『ディズニーランド』はやめて『こども自然公園』に行って来たが、子どもが喜んでいたよ。寺内君ありがとう。」と時田が応えました。
 「楽しい休日を過ごされてよかったですね。」と寺内が言った後、二人は雑談をしながら駅の近くのビルの中へ入って行きました。

著者

溝田昌宏