「相鉄乗って、おうちに帰ろう。」いろどり。

母「走らないよ~。」
俊「オレ、外が見えるところ!」
涼「りょうも、りょうも!」
母「ケンカしないでね~。あと、静かにしてね、迷惑になるから。さっきからずっと言ってるけど。守れてないけど。」
俊「ママ、オレの隣ね。」
涼「ママはりょうの隣~!」
俊「涼平はあっち行けよ!」
涼「ヤダ!やーだー!」
母「ママは真ん中座るから。静かにして、あともうちょっとだから。」

俊「希望が丘まであと何分くらい?」
母「電車が出てから15分くらいだよ。」
涼「りょう、つかれた~。」
母「ママの方が疲れたよ・・・。遠い、埼玉、本当に遠い。あんた達ずっとうるさいし。特に俊平。お兄ちゃんなのに一番うるさい。」
俊「なんだかんだでママも結構喋ってるけどね。」
母「・・・。」
俊「痛っ!暴力反対!」
母「兄ちゃんが悪いよねえ、涼ちゃん?」
涼「わかんなーい。」
母「あっそ。」

俊「ばあば、元気かなあ。」
母「電話では元気そうだったじゃん。それより俊、じいじのことも心配してあげてよ。きっとホームまで迎えにきてくれてるよ、じいじ。」
俊「今日もあの派手な服着てるかなあ?」
母「派手な服?」
涼「お花の~。」
母「ああ!あれ、アロハって言うんだよ、派手だよねえ。」
俊「オレは絶対ああいうのは着れない。」
母「わからないよ。じいじだって昔はあんな派手な服着てなかったよ。」
俊「オレは着ない。いくつになっても絶対着ない。」
母「兄ちゃんがおじいさんになった時にどんな服着てるか、涼ちゃん見ておいてね。」
涼「いいよ~。」

涼「しゅっぱ~つ!」
俊「この川、魚いるかなあ?」
母「ママが結婚する前、アザラシがいたことがあったよ。」
俊「うっそ!」
母「嘘じゃないよ。本当だよ。」
涼「ゴマちゃん?」
母「ゴマちゃんじゃないアザラシ。多摩川からきたタマちゃん。」
俊「適当言ってない?」
母「言ってないよ。信用ないなあ。」
涼「ママ、タマちゃん、今もいる~?」
母「どうかなあ?今もいるかも。探してみたら?」
俊「オレと涼が川見てる間はおとなしくていいやとか思ってるんでしょ。で、今のうちにスマホで『帰ってきたよ~、遊ぼうよ~!』とかメールするんでしょ、友達に。」
母「・・・よくわかってるじゃん・・・。」
涼「ママ~。アメちょうだい~。」
俊「ガマンしろよ!もうちょっとなんだから!」
涼「やだ~、食べたい~!」
母「しょうがないなあ・・・一個だけだよ。」
俊「じゃあオレ、オレンジ味。」
母「結局あんたも食べるのか。」

俊「あ!湘南新宿ライン!」
涼「ママ、あれ、りょう達が乗ってきt湘南新宿ライン?」
俊「違うよ、それはもうとっくに行っちゃったよ。」
母「あれ、湘南新宿ラインじゃないかもしれないじゃん。上野東京ラインかもしれないし、東海道線かもしれないし、横須賀線かも。」
俊「横須賀線は青いラインだよ。」
母「ああ、そっか。詳しいね。埼玉の子なのに。」
俊「なんだかんだでよくきてるし。」
母「電車大好きだったもんね。昔はあんなに可愛かったのにね・・・。」
涼「ママ~、あれ何~?」
母「どれ?」
涼「緑のまるいやつ~。」
母「ああ、ガスタンク、ママが小さい時からずっとあるよ。」
涼「バクハツする~?」
母「まさか、しないよ。」
俊「・・・ドカーン!」
涼「!」
母「うるさいな!」
俊「イヒヒヒヒ!おもしれ~!」
母「やな奴だね、あんたは。」
涼「・・・ママ~。アメ落としちゃった。」
俊「まだ拾って食べれるよ。ギリ3秒。」
母「弟に変なこと教えないの!ないから、3秒ルールとか!」
俊「ウソ、ないの?」
母「あると思ってたの?やってたの!?」
俊「・・・まさかあ。」
母「とにかく、あんたが拾いなさいよ。」
俊「はーい・・・。ティッシュちょうだい。」

涼「にしよこはま、だって~。電車いっぱい止まってる~。兄ちゃん、あれ、11000?」
俊「違うよあれは10000系。11000系は隣のやつ。ママはどれが好き?」
母「ママは新7000系。」
俊「シブいね。」
母「そう?っていうか、平沼橋過ぎてたんだね。」
俊「とっくだよ、とっく。横浜出てすぐじゃん。」
母「でも俊、知ってる?横浜と平沼橋の間より、もっと短い区間があるの。和田町と上星川の間。」
俊「そうなの?」
母「間違いないよ。ママが俊くらいの時、クラスで一番頭がよかったウッチーって男の子が。」
俊「ウッチーがそう言ってたの?」
母「違う。ウッチーのお兄ちゃん。」
俊「・・・ウッチーが頭よかったからって、ウッチーのお兄ちゃんが頭いいかはわかんないじゃん。頭いい人が絶対間違えないかどうかも。」
母「そうだね、確かに・・・。」
俊「今、オレと涼平のこと見たよね。」
母「・・・見てないよ。」
涼「ママ、りょうのこと見た~。」
母「とにかく。見てればわかるよ。和田町出たら、上星川まで真剣に外見てて。それまで静かにしてて。」
俊「涼、しりとりしようぜ。」
母「あんた、人の話聞いてる?」
俊「いいじゃん。オレからね。天王町。」
母「あれ、もう天王町?」
俊「うん。涼、天王町!早く答えろ!」
母「うるさく騒いだらおしまいにするよ。」

涼「・・・おしり。」
母「・・・へ?」
涼「おしり。」
俊「・・・何?」
母「・・・ああ!違うよ涼、てんのうちょう、だよ、てんのうちょお、じゃないよ。」
俊「!お、おしり!涼、おしりだって!ギャハハハハ!」
涼「アハハハハ!」
母「お、じゃないよ、天王町・・・。」
俊「ギャハハハハ!」
涼「アハハハハ!」
母「お、じゃなくて、う、だよ・・・。もういい、しりとりおしまい。」
俊「ギャハハハハ!ヒー、ウケる!」
涼「アハハハハ!おしり~!」
母「・・・。」

俊「星川駅。新しくなったね。」
母「もうすぐ相互運転が始まるからね。」
涼「そうご運転って何~?」
俊「乗り入れだよ乗り入れ。埼玉、近くなるね。」
母「そうだね。ちょっと早く着くようになるだろうね。まあ、ママはあんた達がおとなしくしていてくれたら別に今のままでも大丈夫なんだけど。」
俊「むーりー。」
涼「むーりー。」
母「じゃあ早く完成していただかないと。ていうか、何で無理なのよ。」

俊「あっ!和田町!涼!外見てろよ!」
涼「うん!」
母「電車の先頭からなら、上星川駅が見えるかもね。」
俊「涼!行くぞ!」
涼「うん!」
母「ダメだって。ここ一番後ろの車両だよ。」
俊「ちぇっ。」
涼「駅~!」
俊「ホントだ!短い!もう上星川だ!モッチーすげー!」
母「モッチーじゃなくてウッチーだよ。ウッチーじゃなくてウッチーのお兄ちゃんだし。でも兄弟揃って頭良さそうな顔してたもんね。二人ともメガネかけて。」
俊「メガネかけてたら頭いいってわけじゃないでしょ。パパだってメガネかけてるのに。」
母「パパに言いつけるよ。」
俊「ごめんなさい。お願い。やめて。」

涼「何駅~?」
母「に・し・や、だよ。西谷駅。」
俊「ウソ、オレ『にしたに』だと思ってた!」
母「何でそんな勘違い・・・。」
俊「だって降りたことないし・・・。」
母「そっか、いつも急行乗るから知らないのか。」
涼「快速もあるよね~。今日は特急乗ってるよね~。」
母「涼ちゃんよく知ってるね。でも今乗ってるのは急行だよ。」
涼「そうだっけ~?」
俊「最近まで特急ってなかったよね?」
母「そうそう、間違えて乗ると希望ヶ丘に止まらないから気を付けないと。ママが埼玉に引っ越してからできたから、慣れないよ。」
涼「あっ!新幹線~!」
俊「ほんとだ!N700だ!」
母「そうなの?」
涼「乗りたいな~。」
母「涼ちゃん、新幹線乗ってどこに行きたいの?」
涼「温泉~。」
母「いいね~温泉。ママも行きたい。」
俊「オレはハワイ。」
母「どこまで乗ってもハワイには着かない。」
俊「知ってる。それに、お金の問題だけじゃなくてママが痩せないとハワイには行けないことも知ってる。だから一生行けないことも知ってる。」
母「どういう意味よ!」
涼「ママは痩せてるよ~!」
母「涼ちゃん、ありがたいけど大きい声では言わないで、痩せてはないから、恥ずかしいから・・・。」
俊「ギャハハハハ!」
涼「アハハハハ!」
母「俊平、覚えてなさいよ!」

俊「鶴ヶ峰。ママこの駅降りたことある?」
母「あるよ。友達住んでたしね。それに区役所があるから希望ヶ丘の人は結構くるよ。」
俊「区役所?」
母「横浜市は大きいから、市の中でまた区っていうグループにわけてるんだよ。希望ヶ丘は旭区。旭区役所が鶴ヶ峰にあるの。」
俊「歩いていけないんだ。うちからは市役所、近所だよね。」
涼「涼、走って行ける~。」
母「ね、だから電車に乗って行くのはちょっと大変だよね。」
涼「楽しそう~。」
俊「うん、楽しそう。」
母「ああ、そう・・・。」
涼「この建物、おおきいねえ。」
俊「タカナシ乳業だよ。ね、ママ。」
母「俊、よく知ってるじゃん。」
俊「ママがいつも話してるじゃん、グリコ森永事件。」
母「ああ、そう!グリコ森永事件!」
涼「何~?」
母「涼ちゃん、聞いてよ。ママ、遠足でここの工場にきたことあるの。」
涼「そうなの~?」
母「そうなの!でもね、真由ちゃんいるでしょ?ママのお姉ちゃん。真由ちゃん達は森永ってお菓子の工場に遠足に行ったの!それでチョコレートとかおみやげに貰って帰ってきたの!ママの前で見せびらかして食べたの!」
涼「そうなんだ~。」
母「だからね、ママが行く時はママが真由ちゃんに見せびらかしてチョコ食べようと思ってたら、グリコ森永事件っていうお菓子に毒を入れる事件が起きてね!ママ達はタカナシの工場見学に変わっちゃったの!」
俊「いいじゃん、ヨーグルト貰って食べたんでしょ?おいしかったんでしょ?」
母「だけど、ヨーグルトは持ち帰っちゃいけなかったの!ママは真由ちゃんに見せびらかしたかったの!」
涼「ふーん・・・。」
俊「ほら、涼が呆れてるよ。」
母「食べ物の恨みは一生だよ。許さない、時効とか関係ない。」
俊「ここ通る度にその話するつもり・・・?」

俊「二俣川だ。希望ヶ丘は次だよね。」
涼「いっぱい人が降りるね~。」
母「いずみ野線に乗り換える人がいるからね。
駅出たら揺れるから気をつけてね。」
涼「わかったー。」
俊「座ってるから平気だよ。」
母「そろそろ上の荷物取ろうかな。うっわ!いった~!」
涼「ママ大丈夫~?」
母「頭ぶつけた。揺れたから。」
俊「自分で気をつけろって言ってたじゃん。」
母「久しぶりだったからさあ・・・。」
俊「何やってんの。」
母「ほら、あんた達も忘れ物しないようにね。」
涼「くつ履いた方がいい~?」
母「靴脱いでたんだっけ?そうだね、もう履いてね。」
俊「オレも履くか。」
母「あんたも脱いでたの?早く履いてね。」
涼「着いたね、希望ヶ丘~。」
俊「涼、ドアの前で立ってるぞ!」
母「危ないから走らないでね。」
涼「着いた~!」

俊「・・・あれ?」
母「・・・あれ?」
涼「止まらないね~。」
母「何で!?あっ!」
俊「ママ!これ特急なんじゃないの!?」
涼「そうだよ~、特急だよ~」
母「えっ!?ちょっと涼ちゃん、何で言ってくれなかったの!?」
涼「りょう言ったよ~?」
俊「ママ、涼平さっき言ってたよ・・・。」
母「・・・。」
俊「あっ!じいじ!」
母「えっ!?」
俊「あれ!派手な花柄!」
母「本当だ・・・。派手だねえ・・・あれだけ派手だと、このスピードでもわかるんだねえ・・・。」
涼「あろは、って言うんだよね~。」
俊「じいじ、バイバーイ・・・」
涼「じいじバイバーイ!」

俊「あーあ。何やってんのママ。」
母「・・・まあまあいいじゃん。座ろうよ。しりとりやろうか。」
俊「やらない。」
涼「やらなーい。」
母「いいじゃん、やろうよ。希望ヶ丘。か、だよ!」
俊「か・・・。」
涼「かっぱ巻き~。」

著者

いろどり。