「足跡ものがたり」そららID1011

 いつの頃からか、一つの噂が立っていた。
 それに触ると、いいことがあるらしい。ツキが転がり込むという。
「本当だけど、内緒だよ。広まりすぎは収拾つかなくなるだろ?」            
 半年前からの居候、友人の蘇芳丸が教えてくれた。名の通り蒼みがかった黒色の、小柄な猫だ。宿代代わりに、と中一の奈緒を朝夕こうして駅まで送ってくれている。
「オイラの友達が兄さんと二匹で、ここの会社で働いているんだ。真っすぐな奴で嘘はつかないよ。そいつが言うには、車内で偶然見つけるのが大事で、僕なんかよく出会っちゃって、見ない日はないよ、だってさ。中で働いているんだから、当然だよなー、ここんとこモテモテで、ちと調子に乗ってるけどね。」
 猫が口を尖らせるのを初めて見て、少女は笑った。
「大丈夫、言いふらしたりしないよ。ツキの話なら、神社の娘としては、確かめとかなくちゃ。」
「出会えたらラッキーだね!いってらっしゃい、奈緒。又帰りに、な!」
 捜索一台目、その日の朝は見つからず、学校帰りに先の駅まで出かけるので、帰りの快速に期待した。が、ホームに入ってきた電車内を目で追ってすぐに、ここには無いとわかってしまった。各駅の方が良かったのだろうか。後になってこうして捜すくらいなら、前に見つけた時に、思い切ってつかんでおけばよかった。気にしている時には見つからないもので、少女は少し寂しい気持ちになった。           
 途中駅で乗り換える、沢山の乗客を降ろして、電車は出発。少女は、少しは空いた車内で、ドアにもたれガラスの向こう、夕暮れ色に変わる空を眺めていた。西の空は、流し込んだような紅と蘇芳の蒼色。進行方向に顔を向けて立っていると、自分がこの鮮やかな色の中を、駆け抜けていくように感じた。電車が追い越していく建物は、ここ数年でさらに増えたが、空は変わらずに広々と残されている。
 偶然が大事だそうだから、今度の休みにもマメに電車に乗ってみよう。教材も買えたし、今日も一日、平和にすぎたな~と思っていたら…
 えっ、ちょっと!下り線で一駅のはずなのに、この電車止まらない!!!
 けれど他の乗客は少しも騒いでいない。自分が違う方向の電車に乗ったかと思ったが、別路線の隣駅へ向かう途中とも、景色が違う。何で、何で皆平気なの?
 少女は、周りの乗客の様子がおかしいことに気づいた。静止画を見ているように、電車に揺られる、人々の表情と動きがないのだ。それだけでなく、皆、床から5センチ程、足が宙に浮いている。宇宙船の中のように、人が回転するわけではないが、目をこすりたくなる非日常であることは確かだ。しかも窓の外に目を向けると、電車ごと、空に浮いている?ついさっきまで、まだ線路だったのに。あたし、ほんとに茜空の中に入っちゃった!
 外は、さっきより紅色が増えた夕焼け空。だが次第に電車内はモノトーンへと、変わっていく。心細さに荷物を握りしめたら、自分と持ち物には、色が残っていた。足、自分の足は…良かった、しっかりと地面に着いている。
「あーやや、ごめんごめん。君の立ち位置、ロックしたままだった。」
 この子、誰?鉄道会社の制服着て。
「ちょっとお足元失礼。」
 小さな男の子が、かがみこむと、奈緒の靴に手を当て、シュルっと足跡を引き出して言った。
「うわあ、いい型取れたなあ。君、席譲って
くれたの?ここに親切の跡が、残っている。」
「えっ、うう、うん。」
 自分でもどこから出したのかと思うほど、すっとんきょうな声で少女は答えてしまった。    小学校校低学年位だろうか、愛嬌のある丸顔の男の子の、クリクリした目と、目が合った。背丈に合わない、大きな黄色い斜め掛け鞄を持って、立っている。
 男の子は、両手で持って、少女に見せていた足型を、大切そうにその鞄にしまいこんだ。他に気を取られていて、少女がチラッとだけ見た足型は、男の子の手の上では、夕焼けと同じ紅色をしていた。
「驚かせてごめんねえ。お客様に迷惑かけないように作業していたけれど、君の立っていた所、珍しく大事な足跡があったから、誰かに持っていかれないように、足型ロックしといたの。上から保護シート被せておけば、君ごと時間の空間に呼んじゃう事はなかったのにねー、僕としたことが、失敗失敗。と、いうわけで、今僕に気づいて話しているのは、この中で君だけだよ。周りの人たちは、姿はここにあるけど、本来の時間の流れに置いてきているからね。いつも通り、ただ電車に揺られているつもりでいるんじゃないかな。まあ、でもこの足跡の上に乗った君が、親切な人で良かった良かった。」
「あの、電車ちゃんと降りたいんですけど、友達待たせているし、早く下に、駅に戻してください。」
「大丈夫、少し作業時間もらうけど、君たちお客様の時間はかからないよ。もうちょっとだけ、お付き合いください。」
 そう言うと、男の子は、天井の空調機から巨大な風車を出し、回転させて乗客達の足元から、薄く、ペラペラとした足跡を、飛ばし始めた。白い足跡が剥がれては、はらはらと花びらのように、風に乗って飛んでいく。
「こんなに大きい風車、天井の中に入っているとは思わないでしょ。前はもともと付いていた扇風機を、回して使っていたんだけどね。電車内は足跡でいっぱいだから、レトロな風車をモチーフに、シーリング風にして、風の当たる面積を増やしてみましたー、作業効率アップ!和風とモダンの融合した、落ち着いたデザインも素敵でしょ。」
「足跡には気持ちが残っていてね、誰かの跡を踏むと影響を受けるんだよ。今日は行く道の信号全部青でついてる~とか、なんだか朝からウキウキ気分でとか、ない?いい気分は連れてって、皆に広めて欲しいけど、いやな気分や不安はここでストップさせたいの。」
「この風車はタイマー付き全自動で、普通の足跡と、汚れた足跡だけ検知判断して飛ばせる、高機能な優れもの。さっき兄さんが、こびりついた足跡用に、念の為に汚れ落とし塗っておいてくれたから、ほーら、黒っぽくて、悪いものはすぐ落ちる。嫌な気分よ、さようなら!ラッシュもあるし、すぐ足跡だらけになっちゃうけどさ、車内は本来、クリーンな場所であるべきなのでーす。」
 足跡は宙を舞い、難なく窓ガラスを通過すると、外の空気に解けて消えた。あんなに沢山あったのに。
「大事な足跡って、赤いの?」
「君、色の違いがわかるなんて、感がいいんだね。これは、おさよさんの足跡だ。正確には、おさよさんの志を継いだ、若い料理人さんの足跡。随分と昔の跡なのに、どこでこの足跡に出会えたんだろう?ここには、美味しいものを沢山作りたいって、努力がこもっているの。気持ちが同じ人同士、引き合っていたんだね。そんな足跡を踏めたら、やる気満々間違いなしだ。」
「あたしも?」
「そう、でももし偶然次に、足跡を踏んだ君が、悲しい思いで一杯だったら?足跡効果が半減してしまう。程よい足跡は、皆に広めるからそのまま残しとく。極上な足跡は、足型に取り上げて、まずは保管しないと」
「おさよさんって、偉い人なの?」
「いんにゃ、ごく普通の女の人だよ。まだこの辺りが、都や大きい神社に奉納する馬を育てる、牧野だった頃の人。小さい頃から家族のために山の草実を探して回って、食べ物で笑顔にするには、って考えていた。お祭り料理の味付けも美味しくて、村の皆も喜んだ。女の人だったから、役には就けなかったけど、都の役人が来る時のもてなしは、おさよさんが中心になって、お膳立てしていたんだ。膳、の名前が、今でも土地に残っているよ。
 おさよさんさんが君位の頃に、行商に回った所、今で言うレシピを教え伝えた所、病人やご老人に食べ物を分けて通った所、美しくて強い心の足跡が沢山残ったんだ。情熱の赤、だね。今を見てよ、この近く、隣のその隣の駅まで、美味しい野菜の直売所、スーパーにレストラン、ねっ、沢山の食べ物が流通しているでしょ。」
 なるほど、そう言われると、安くて暮らしやすい所に、質にこだわりがある所。お店も人も、自然と呼ばれて集まって来たのだろうか。行きつけの何軒かが、頭に浮かんだ。
「おさよさんが年取って亡くなる時に、子供や孫に、自分の体に入るから、土地や水を汚さないようにって、伝えたの。美味しいものを沢山にして、皆で分け合って、皆で笑顔になるようにって。その話を聞いた村の人たちも、毎日あちこちに歩くから、自然におさよさんの歩いた足跡を踏んで、やっぱり、村を汚さないように心がける。ここには、新しい人もやってくるけど、ずっとずっと昔からの緑が残されているでしょ。特別な一人の力だけじゃなくて、お家の庭のお手入れを楽しみにしている、ご老人のお散歩靴の足型、これも大事。こっちは救急の患者さんを助けてホッとしたお医者さんの足型なんだよ。お医者さんの足跡は、ロックする前に、若い介護士さんに乗られちゃったんだけど。」   
 男の子が鞄から取り出して見せる、いくつかの足型は、濃さや色が微妙に違っている。
「この若い介護士さんなんて、今朝夜勤明けでヘロヘロだったのに、顔色悪かった人に席を譲ってあげて、立った所が、このお医者さんと、体育会系の学生さんの足跡だったんだー。学生さんは、秋の大会に向けて体作っているから、スタミナたっぷりじゃない?二人のパワーもらって、そのままかお出かけしちゃったみたい。みなとみらいの買物袋持って、2本前の下りで帰ってきたよ。一時的な疲れたなーって気持ちくらいなら、良い足跡を汚す前に、蒸発してしまうからね、悪い影響力無くて、全く問題なし。」
「問題あるよ、君がお仕事、頑張っているのはわかったけど、電車ごと空にあげなくたっていいでしょ?危ないよ、線路のままでもできるって。この電車、早く地面に降ろそうよ。」
「いやいや、仕事はいつも、ほとんど線路の上で、走っているうちにやっているよ。誰も気づかないけど。僕たちの就任する前は、車掌さんも車内巡回して、切符ハサミの音で、悪いもの飛ばしていたらしい。電車が空を飛んでるのは、特別な日だから。今日は、車内だけでなく、地域の足跡整理の日なの。でっかいドクターイエローみたいなのがいるんだけど、ねぼすけだから、こうして空飛んで冷たい空気に当てて、出動前に起こしとかなきゃ。」
「もし君がねぼすけに会ったら、驚くだろうなぁ。」
 いたずらっぽく笑ったそのクリクリした目、どこかで見たような…さっきの駅で?何のポスターだったっけ。少女が思い出そうとしていると、
「おーい、もうそろそろ電車降ろすぞ、後ろ半分の車両は、終わっているか?」
 トタトタ走って、前車両から、もう少し身長のある男の子がやってきた。この子の鞄は緑で、2個の星形バッチがついている。少女を見て驚くと、黄色鞄くんから事情を聞いて、
「申し訳ありません、お急ぎのところ、弟がご迷惑をおかけして。あれ、奈緒さん?神主さんのところの。」
「はい、でも…」
「ああ、お話しするのは初めてなんです。車内でお見かけするくらいで。お父様にはいつもお世話になっています。弟が知り合った、蘇芳丸をお宅に居候させてくださいとお願いしたのも僕です。可愛がってもらって、先日見かけた時には、一匹でいた時より、毛並みも柔らかそうに見えました。お家は、やはりいいものですね。」
「外にいる方がいいって、蘇芳丸は部屋には入って来ないけど、仲良くしてます。蘇芳丸のお友達、二人は猫ちゃん?」
 二人は顔を見合わせると、せーの、でぴょこんと耳を立てて、笑顔を見せた。黄色鞄くんは、くるりと回って、しましまシッポを現してくれた。そう言えば犬派なのに、蘇芳丸を連れて来たのはお父さんだったっけ。
「神社の奈緒ちゃんか、感がいいはずだ。それで僕たち、出会ったんだね。」
「こら、それは感じゃなくて、ただのお前のミスだ。足型を留めるなら、必ずシートを被せて、後に来る人に迷惑がかからないように、遮断してから作業すること、規律の第三。忘れたわけじゃないだろう、規律は遵守。作業は慎重に安全第一。一年ミスなく努めたら、お前だって、こういう綺麗な星がもらえるんだぞ。」
「わかってるよ。なんだい星ぐらい、今に4つも5つもとって、兄さんを抜かしてやるぞ。」
 弟猫は、そう言いながらも、緑の鞄の上で反射する、キラキラバッチが眩しいらしく、ふう、と一つ、ため息をついた。その可愛らしい様子に思わず笑みがこぼれたせいか、少女の思考回路も、ようやく落ち着きを取り戻しつつあった。それでもここは、まだ空中…不安定な事この上ない。
「あの、やっぱり、早く降ろして。蘇芳丸が、待ってるし。」
「もちろんです。それに、お詫びに特別に一つ、良いことをお教えしますよ。この電車の中に…があって、…なんです。限られたお客様だけに、サービスでお伝えしています。それで、あの、できれば今回あったことは奈緒さん、くれぐれもご内密に…。電車は安全第一、空を飛んだりなんて、普通では、あってはならない事ですから。」
 二匹とあれだけ長く空で過ごしていたのに、特に遅れを知らせるアナウンスもなく、電車は今、進行中だ。二匹に促されて目をつぶり、5つ数えて再び目を開けたら、車内は色で満ちていた。人々の足がしっかり床についていることと、吊革に捕まる手が、ゆらゆらと揺れているのを見て、少女は心から安堵した。
 改札口を飛び出した少女が、時刻表と駅の時計を見比べると、やはり今の電車は一分の遅れもなく、定刻通りの運行。皆無事に自宅のある駅に到着していた。
 蘇芳丸には前もって伝えて置いたので、寄り道が長い!と、とがめられることは無かったが、ひょこっと植え込みから顔を出した彼を、思わずきゅっと抱きしめしまったので、飼い猫ではない、この自称誇り高き家猫に、こっぴどく叱られた。
 帰り道は、石畳が冷えているのだろうか、蘇芳丸が足先を浮かせて、ぴょこぴょこと足を運んでいることに、少女は気づいていた。
 蘇芳丸はまだ、機嫌回復中だ。
「そおれで~、肝心のそれ、触れたの?か~!忘れてた?もー奈緒のとんちん、貫太郎。あいつらに頼んで、触らせてもらえば、神社娘の任務、それで完了じゃん。」
とあきれ顔。
「何だかいっぱいいっぱいになっちゃって。でもあの子たち、凄いね、仕事量もだけど、やっていることが。」
「先祖代々だから、ちびっ子猫の頃から慣れているんだろ、猫はのんびりしているようで、結構役に立つ。猫が庭を通る家には、悪いものが通らない。」
「そうなの?」
「猫の、実は秘めたる生命エネルギーがさ、マイナスエネルギーの物を、遠ざけてる。オイラ達には、人には見えないものが見えるんだよ。道端で、人が通ってるの、ジッと見ている猫、いるじゃん。あれは、その人が行き過ぎるまで、妙な物に出会わないように、見守ってるの。」
「こんな感じで。」
 そう言って、並んで歩いていた蘇芳丸が、視線を先に向けまばたきすると、薄暗がりの道の表面に、沢山の足跡が映し出された。
「ケモノの持つ、特殊能力。こんなん、猫にとっては当たり前なのさ。」
「すごーい、猫の目ライトだね。」
「しー、声が大きい、先を歩いている人間に聞こえるよ、あ、あんまり端歩くなよ奈緒、そこに汚れた足跡ある。あの二匹に限ったことじゃないって、分かればいいんだけどさ。」
 蘇芳丸の鼻孔が、膨らんでいる。
「うんうん、やっぱすごいわ、蘇芳丸も」
「も、って、ついで、かー!」
 駅からの人々はそれぞれの家路へ分かれていき、やがて少女と一匹だけになって、普通の声で喋りながら家へと続く坂を上っていくと、少し離れて、線路が見下ろせる所に出た。
「あ、電車。人、乗ってないね。」
 煌々と電気をつけて、明るい回送列車の中、小さい子猫が二匹、走り回って作業の真っ最中だ。
「頑張ってるじゃん。あいつら」
「さっきは男の子だったんだよ、二人とも。」
 こちらは街灯だけだから、暗いはずなのに、蘇芳丸が尾をピン、と立てると、二匹も気づいて、同じくピン、と立てた。
「猫の挨拶だ、顔をこっちに向けなくても、ちゃんとわかってる…、って、えっ、あいつ何言ってるんだ?」
 弟の黄色鞄君が窓に近づいて、こちらに何か伝えようと上を指さしている
 少女が可愛い肉球に見入っていると、電車の屋根がムクムク丸く膨張し、車体から離れると、ウネウネとくねりながら、宙を舞い始めた。よく見ると、屋根の上に乗っていた何かが、分かれていったのだ。
「何何、あの、長いの、龍?」
「そんなん、いるわけないだろ、よく見なよ、ミミズだ、巨大ミミズ。」
 なんか暖かい、と思ったら、少女の足元に蘇芳丸が、ピッタリ身を寄せていた。
「うわああああああ!」
 真正面から向かってこられて、思い切り叫んで立ち尽くす二人の真横を、長い姿がするり、ズルズルと抜けていく。
「家の方だ!」
 一人と一匹、転がるようにしてその後を追う。
 ミミズは、体を地面に擦り付け、うねりながら、神社の石段を真っすぐ駆け上っていく。「ああ、今日この時間に限って、石段に誰もいませんように。」
 蘇芳丸の猫の目ライトを向けて、先まで見ると、参道を行き来した足跡が浮かび、舞い飛んでは、ミミズの体に張り付いていくのが、ぼんやり見えた。参拝者の足跡を身にまとったミミズは、神社の山中、そのまま地面に潜り込んでしまう。
「家、あんなの飼ってたの?」
「馬鹿言うなよ、あんなのいたら、オイラ寝てるうちに食われちゃう。あ、出て来た!」
 蘇芳丸が目で追っているのは、大きな池の方角。ザザン、ザザンと派手に水音がするところをみると、土から出て来たミミズは、池の中に入ったらしい。その後、天高く上がると、落ちてくるその勢いで、地面に潜り込んだまま、二度と出てくることはなかった。
 しばしの沈黙の後、少女は言った。
「ねえ、蘇芳丸。あたし、思い出したの。弟猫君が言ってた、ねぼすけのドクターイエロー、あのミミズが、地域の足跡整理をしてくれているのよ。」
「何だい、それ。あ、やっぱ言わなくていい。あいつを追ってきたのに、オイラ達の方が、追っかけ回された気分。でも疲れた、って言ったら、あのミミズ、掃除しに又戻って来ちゃったりして。」
ふるっと一回身震いして、蘇芳丸が答えた。
 少女と一匹は、行く道を猫の目ライトで照らしながら、すっかり綺麗になった参道を通って、無事家に帰った。さり気なく家族にリサーチしてみたが、暴れまわった巨大ミミズを見た人も、石段にいて騒動に巻き込まれた人も、いなかったようだった。
 
 電車の中にあるもの、それ、に触るといいことがあるらしい。
 そうそう、奈緒は、後日あっけにとられるほどあっさりと、それに触ることができたのだが、それが何なのか、どんなツキにあやかれたのか、続きはまたのお話。

著者

そららID1011