「SOTETSU2047」VVVF

 相模鉄道は、神奈川県の横浜駅を起点に、海老名駅までの本線、その途中駅二俣川駅から湘南台駅までのいずみ野線の計35・9キロを営業する大手民鉄である。
 開業130周年を迎えた2047年の相模鉄道は、その自社の営業範囲を大きく超えるエリアに自社車両を展開し、開拓した輸送需要とお客様ニーズ、自社設備の保守体系を両立した運用を実現し、効率的なシステムを完成させている。また、その高度な運用をサポートする信号や電力・通信などの設備も一新されており、最適な人材・費用で維持・運用が可能になっている。では、その様子を一人の利用者が織りなす物語と共に見てみよう。
 
 2047年4月の某日、75歳のN氏は、朝食を済ませて自宅を出た。現在の日本は、20年ほど前まで存在していた従来の年金制度が廃止されてしまい、N氏は定年退職後も収入を確保するために現役時代に勤務していた会社と再契約して、横浜市内の事務所に毎日通勤している。再就職後の勤務は出社時刻や勤務時間の設定は自由だが、N氏は十時出社・十六時退社を基本としている。
 自宅から徒歩十分の相模大塚駅に着いた。駅に自動券売機や改札機はなく、入場口には接客と監視を兼ねた案内ロボットがいて、『いつもご利用ありがとうございます』と声をかけてくる。この瞬間にN氏の入場記録が手元の端末に記録される。
 エスカレータを降りホームに出ると、端末に次の列車案内と目的駅の到着予定時刻が表示される。今日のN氏は普段通りに自宅を出発したので、9時丁度発の横浜行き(9時30分着)、同じく9時丁度発の東急電鉄・東京メトロ乗り入れ直通浦和美園行き(10時30分着)が表示された。横浜行きを選択すると、ホームの8号車で待つように誘導案内表示が出たので、N氏はそこまで行く。
 9時丁度にやってきた列車は10両編成だが、前の4両は東急電鉄の車両で、どうやらこれが都心へ直通する電車のようだ。後ろの6両は相模鉄道の11000系で、2014年製造の車両を編成短縮の上改造リニューアルしており現役バリバリである。N氏はこの編成の4両目「8号車」に乗り込んだ。
 列車はほどなくして出発。相模鉄道線の途中各駅に停車し、9時22分頃西谷駅に到着した。この時、先頭寄りの東急電鉄の車両は停車せずにそのまま走り去っていく。残された6両編成はドア開閉後、すぐに発車。横浜駅には所定の9時30分に到着した。
 横浜駅でN氏は出場口を通過するが、付近には相模大塚駅と同じように案内ロボットがいる。横浜駅は乗客が多いこともあり個別の挨拶はもらえないが、端末の出場記録はしっかり出ているので、確実な「改札」は行われている。案内ロボットや補助カメラによる監視で、本人確認と追跡が可能となった現在、従来の改札機は不要となっている。
 いまだに改良工事が続いている横浜駅に降り立ったN氏は、駅近くのビルに入居している会社事務所に到着した。通勤時間は45分ほどだが、端末に誘導される号車は座れることが多く、疲れはほとんどない。このまま80歳までは仕事を続けられそうである。
 
 9月某日、N氏は、会社を定時の16時に退社。横浜駅から京浜急行と都営地下鉄を乗り継いで都心に向かう。
 都営三田線は現在特徴的な運行体系で、建設の遅れでようやく2020年に開業となった神奈川東部方面線の先、N氏がいつも利用している相模鉄道の始発駅海老名駅まで直通するため、都心連絡の最高速度170キロの特急列車が運転されているなど、車両は多彩だ。N氏は特急列車を見送り、後続の西高島平駅行きに乗った。
 途中の水道橋駅で下車したN氏は、これから始まるプロ野球の巨人対横浜戦を観戦に行く。いよいよ本日、マジック1の横浜の優勝がかかる一戦。横浜ひいきのN氏にとっては楽しみなゲームである。
 試合は延長12回表に勝ち越した横浜がその裏を抑え、19年ぶりのリーグ優勝を成し遂げた。N氏は優勝の余韻が冷めやらぬ球場を後にし、水道橋駅から家路につく。   
 都営三田線の列車は試合終了のタイミングから、4分ごとに臨時増発運転を開始しており、ホームの混雑は限定的だ。22時25分発の臨時列車は、列車を待つ乗客の行先をAIが自動検討した結果、「横浜ファンの神奈川県民、しかも相模鉄道沿線の乗客が多いため」と判定され、相模鉄道直通の海老名駅行きとなった。列車編成は相模鉄道の特急用新型車両30000系で、通常では考えられない列車だが、急激な輸送需要に応えるために急遽用意されたようだ。
 N氏は30000系のシートで祝い酒を傾けて、最高の気分で家路につくのであった。
 
 十一月某日、N氏は休暇を取って2日間の温泉旅行を楽しむつもりである。
 朝食後、相模大塚駅から海老名駅行きの普通列車(12000系6両編成)で出発。日曜日の朝のせいか、乗客はまばらである。10分弱で海老名駅に到着した。
 海老名から小田急線に乗り換えて箱根湯本へ。名実ともに国際的な観光地となった箱根は、海外からの旅行者も数多いが、ここでいかにも日本的な体験ができることは、日本人のN氏にとっても心地よい。箱根湯本の温泉旅館での、のんびりとした休日を過ごすことができた。
 箱根湯本駅からの帰り道は、12時45分発の特急ロマンスカー。車両は相模鉄道が小田急電鉄と共同開発した新型N7000形NLSE車で、自動運転システムを搭載している。小田急線の近郊区間は基本的な設備が30年前とさほど変化していないが、運転や保守は高度に自動化が進み、人手がロボットに置き換わっている。このNLSE車には、2階の運転室に複数のカメラやセンサが搭載され、運転操作もAIロボットによる制御になっている。ただし、人間による運転操作も可能となっており、人間による運転操作の技量維持とAIロボットの制御性能向上をお互いに切磋琢磨している。
 ロマンスカーは相模鉄道線に乗り入れ、N氏の下車駅相模大塚駅に13時51分到着。相模大塚駅は、通常は特急列車が停車しないが、乗車客の最終的な下車駅が通常停車駅以外の場合、乗客数の上位2駅に限り臨時停車するサービスが機能した。N氏は充実の2日間の旅を終えて家路についたのであった。
 
 開業130年目の相模鉄道は、いまや日本を代表する先進鉄道となっている。さらに進化を続ける相模鉄道。SOTETSUは今後も楽しみな存在である。

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